47都道府県ごとに定める『地域別最低賃金』は毎年10月初旬に発効されており、もし最低賃金の引上げがあれば、使用者はこれに対応しなくてはなりません。
今回は、別々の都道府県に事業所がある場合の最低賃金の取り扱いについて解説します。
最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会によって、地域の実情や経済状況を踏まえた議論が行われ、その結果をもとに、各都道府県の労働局長が決定します。そのため、全国一律ではなく、差が出るわけです。
もし同じ会社の事業所が別々の都道府県にある場合は、それぞれの事業所がある地域の最低賃金が適用されます。給与計算を本社が一括して行っている場合でも、あくまで事業所の所在地の最低賃金が適用されることに注意しましょう。
ただし、それぞれ異なる都道府県に事業所がある場合でも、その事業所がごく小規模で独立性のない場合は、本社機能をもつ事業所と同一のものとみなされ、それぞれの最低賃金のうち一番高額なものを採用することになります。
また、派遣先と派遣元で事業所の所在地が異なる場合にも注意が必要です。原則的に、派遣社員には派遣元の所在地に関わらず、派遣先である就労地域の最低賃金が適用されることになります。
これらのことから、各事業所の賃金をそれぞれの地域の最低賃金に合わせて運用する場合には、注意が必要です安全なのは、各事業所のなかで最低賃金が一番高い地域の額に合わせてしまうことです。
たとえば、東京都、大阪府、福岡県に事業所があれば、すべて東京都の最低賃金1,013円に合わせます。こうすることによって、人事異動のたびに賃金を変更せずに済みます。
また、この方法は、従業員の仕事へのモチベーションを保つことにもつながります。業務内容が変わらないにもかかわらず、異動によって賃金が下がると、従業員は不満に感じてしまうでしょう。結果として、生産性の低下や離職などを引き起こしてしまうことになります。
最低賃金はあくまで目安として捉え、従業員の生活や気持ちを考えて、給与体系を決定することが大切です。